ITmedia NEWS > ネットの話題 >

プロ野球、SNSへの投稿制限 ファン離れなどの影響懸念もNPB「ルール内で楽しんで」

» 2025年03月10日 10時40分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 日本野球機構(NPB)は今季から、プロ野球の試合におけるプレー動画や写真のSNSへの投稿に制限を設けた。これまではSNS投稿に関する規定がなかったことから、ファンの間では「いろんな視点のプレーや表情が見られなくなる」「野球離れが進むのでは」とさまざまな声が上がっている。(川峯千尋)

photo

国際的にも厳しい規定

 対象となるのはNPBの試合観戦契約約款に基づいて開催されるオープン戦や公式戦で、2月から適用されている。昨今、営利目的で試合のライブ映像が配信されるケースが散見され、球場では売り子の盗撮や警備員の名札をさらすといった迷惑行為が発生。担当者は「放映権や個人の権利の侵害にあたる行為。権利保護の在り方も考えながら、野球観戦の価値向上のために今回の規定を作った」と説明する。

 全てが制限されたわけではない。周囲に迷惑をかけなければ、従来通りプレー中も動画や写真の撮影自体はできる。観戦者が試合を楽しむ様子やイニング間のイベント、ブルペンで肩を作る投手の様子などは試合後、140秒以内ならSNSに投稿可能だ。担当者は「ルールの範囲内で楽しんでほしい」と話す。

 ただ、プレー中の選手の姿は投稿できない。写真まで制限することには疑問の声も上がり、SNSマーケティングに詳しい国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授は「国際的に見ても厳しい規定。消費者の口コミを利用したマーケティング手法は一般的にも重要な戦略になっている。特に若いSNS世代のファン層を獲得しにくくなるのではないか」と指摘する。

他のプロスポーツは

 プレー中の動画・写真のSNS投稿を容認しているプロスポーツもある。サッカーのJリーグは2022年にガイドラインを改定。「公式アカウントからより、サポーターからの投稿の方がサッカー非関心層にリーチする」と、写真投稿を容認した。その結果、Xにおける画像付き投稿は21年から22年で142%増加したという。

 バスケットボールのBリーグも15秒以内の動画・写真なら投稿可能。「リーグの認知度を高めれば、ステークホルダーへの貢献にもなる。権益を有効に使っていくことが重要」としている。

 今回の制限による競技普及面のデメリットについて、NPBの担当者は「違反行為を放置することは、逆に野球離れにつながるのではないか。全部を規制しているわけではない。プレー写真を投稿できないことで、競技普及に悪影響を及ぼすとは思えない」と話す。

定期的に見直しを

 違反した場合の対応は、球団や球場に一任されている。ある球団関係者は「個人で楽しんでもらう分には問題はなかったのに、この規定はファンの萎縮を招くだけ。従来通り、悪質な行為を取り締まっていく感じになるのでは」と頭を悩ませる。

 山口准教授は、ルール化は球界でも深刻化する誹謗(ひぼう)中傷対策の側面もあると分析。その上で「今回の規定が迷惑行為に関して、どれだけ抑止効果があるかはわからない。中長期的に動向を分析して、ちょうどいいバランスに行きつければよいのではないか」と、定期的に見直していく必要性を説いた。

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.

あなたにおすすめの記事PR